スーサンの清掃記01<掃のはなし>

[掃]:『常用字解』によると、帚は木の先端に細かい枝葉をつけて箒(ほうき)の形にしたもの。帚を手にもって廟(みたまや)の中を祓い清めることを掃といい「はらいきよめる、はらう」の意味となる。/掃除(そうじょ)邪気を祓い清めること。
注1:『常用字解』漢字研究70余年の白川 静が中・高校生以上の読者に向けて平易に書き下ろした常用漢字の基本字典。
注2:白川 静(しらかわ しずか、1910ー2006)日本の漢文学者・古代漢字学で著名な東洋学者。

 2013年頃、約30年間のデザイン事務所の仕事を辞めて、次の仕事探しを始めた。そろそろ私は還暦に近い歳、デザインの仕事に就くのは至難の状況だった。そこで、IT業界の就職を目指し、厚生労働省ハローワーク職業訓練を受講することにした。受講コースはウェブクリエーター科の6ヶ月コース。ところが、ウェブページの記述言語は思っていたより難しく、訳が分からない状態。一日5時間のハードなスケジュール、若い人とは違い衰えた頭脳にはつらい授業だった。そんなこんなで、なんとか訓練校を卒業。その後、就職活動を再開した。

 IT業界の仕事は専門性が高い、若者を採用して何年かの間は育てていかなければ使い物にならない。35歳以下の者しか採用しないのが一般的な採用基準だ。結局、何十社も受験する気力はなかったので、パートタイムでの食品業界の仕事を選択し、菓子の製造や居酒屋の厨房で働くことになった。ところが、最近、これらの業界はインドや東南アジア出身で体格の良い若い留学生たちが中心になっている。年配者が長期で働くには難しい職場になっていた。

 清掃の仕事は健康であれば70歳でも仕事は続けられる。ハローワークでパソコン検索すると清掃の仕事は食品業界の数倍の仕事件数がヒットする。ありがたい。選考方法は、即面接の場合がほとんどで、書類選考で落とされるという心配がないのが年配者にはありがたい。それに、清掃現場の社員さんや職員さんが気持ち良く仕事をするためには必須の仕事だし、感謝の言葉も戴けるヤリガイのある仕事だ。
 今の私の職場は杉並区の6階建ての公共施設である。昼間の作業員は6名、夜は2名、それぞれの階を分担して作業をしている。スタッフの平均年齢は70歳近い、その中で私は若手である。週4日働く者、5日働く者など、それぞれ違うシフトがあるのでスケジュールを組むのはたいへんだ。体調を崩す者もいるのでお互いにフォローし合い、お互いを尊重し、素晴しいチームワークで仕事ができている。