スーサンの清掃記04<華のはなし>

 [華]:花びらが美しく咲き乱れている形。咲き乱れている様子から「はな、はなやか」の意味がある。花の字は華の後に作られた文字で華と同じ意味である。拝礼の「拝」の旁は腰を曲げて華を抜き取る形。「おがむ」の意味になる。

 私が清掃しているビルの屋上は庭園になっている。春には、パンジービオラアネモネ、チューリップ、スノードロップスイセンなど、色とりどりの花が咲く。夏は、ヒガンバナ、シラン、ミヤコワスレサルビアニチニチソウ、キジムシロなど。秋は、コスモス、オミナエシ、キキョウ、ハギ、ワレモコウ、ヨモギフッキソウ、クズ、ツワブキ、ススキ、オギなど、様々な草花が咲いている。ところが、台風シーズンになると、丈が2メートル以上にも成長するコスモス、オミナエシ、ワレモコウなどは風に押されて根元から倒れてしまう。屋上庭園の盛り土には重量制限があり、30〜40センチ程度の深さしかないようだ。屋上での栽培の難しさがある。
 この庭園はあまり知られていないようだが、花好きな人が訪れる、憩いの場所になっている。

 1階から6階までの側面は、屋外のスロープ状階段になっている。夏から秋にかけて、シャスターデージー、ノコギリソウ、ベチュニア、アリッサムマツバボタン、キバナキンギョソウカワラナデシコ、フランスギク、ホワイトクローバーなど、いろいろなワイルドフラワーを見ることができる。そして、ドウダンツツジローズマリー、ラベンダーなども咲いている。
 ここでは、いろんな虫や昆虫なども棲んでいる。鳥も訪れたりする。人工的に作られた自然体系である、ビオトープになっている。花が咲く季節になると、近所の保育園や幼稚園の小さな園児たちが訪れて、格好の散歩場所や遊び場所になっている。
 ビルの環八道路に面した外壁は、ムベ(つる植物)のグリーンカーテンが設置されている。ムベは秋頃にアケビのような実をつける。冬になると、ムベの実が熟して道路に落ちてつぶされてしまう。清掃員にとっては厄介な実ではある。

 草花の植え付けや除草などの作業は、月に1回、ボランティアの人たちの手で行われている。毎日行われる広い庭園の水まき作業は、私たち清掃員の仕事だ。夏場は、午前午後、1日2回の水まき作業がある。夏の炎天下での水まきは、熱中症で倒れるスッタッフが出るほどの過酷な作業だ。冬の季節には水を撒くと水が凍ってしまう。水の量や場所に注意が必要になる。