スーサンの清掃記08<引のはなし>

 [引]:弓と丨とを組み合わせた形。丨は直線であり、弓の弦を示すものであろう。弓だけでなく、すべて力を加えて「ひく」の意味に使う。(白川静著、『常用字解』より)

 地球上のすべての物には重さがある。その重さに比例した引力(重力)が発生する。物質同士がお互いに引き合う力が引力だ。

 夜空に光る恒星や惑星、彗星などは決められた位置できらめいている。果てしのない宇宙では、星々の引力に従ってお互いに引かれ合い、自ら回転しながら公転を続けている。夜空の星の配置はすべて宇宙の引力バランスの上に成り立っている。その宇宙空間には、ブラックホールという巨大な質量を持った空間があるらしい。星々も飲み込まれてしまう程の引力を持っている。まだまだ謎の空間だ。

 人間社会においても、人間性や思い続ける意思という引力で世の中が成り立っている。職場における役職や立場、親と子の関係、家族や友達、地域での人間関係のすべてが引力が引き合うことで構成されている。今の自分が幸せだと感じるのか、不幸だと感じるのか、その人の引力の産物なのだろう。感情や思いが強いひとほど引力があって、それが人の魅力になって人を引きつけてしまうのだろう。しかし、人間の場合、体重という質量は少しリスク要因かもしれない。
 
 清掃の現場では、重い機材などを扱うことが多い。掃除機のダクトを移動させる時には押す力を使うが、ゴミを吸い取るときには引く力を使う。押すよりも、引く動作の方が力が入って筋肉疲労は少ないような感じがする。タオルの洗濯にしても、絞る動作がほとんどだ。モップの掃除は左右に引き寄せる感覚で作業をする。引く動作を続けていると腕の疲労もあるが、むしろ指に疲労がたまりやすくなる。バネ指にならないように指のストレッチを忘れてはいけない。